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Netflixに学ぶ最強の組織の作り方

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「NO RULES (ノー・ルールズ) 世界一「自由」な会社、NETFLIX」を読んだ。
内容が本当に凄すぎてかなりの衝撃を受けた。
これからメンバーを増やしていこうという最高なタイミングでこの本に出会えたのはとても幸運だったと思う。
いつでも見返せるように自分なりに要点をまとめる。

能力密度

Netflixは初期の頃、業績がままならず、120人だった社員のうち40人をレイオフして80人に減らした。
レイオフ自体は非常にツラいものだったが、レイオフを行ったことで社員の能力密度が上がった。
社員の3分の1がいなくなったにもかかわらず、社内は突然、情熱、エネルギー、アイデアが満ち溢れるようになった。

・リーダーの最優先目標は、最高の同僚だけで構成させる職場環境を整えることだ。
・最高の同僚とは、重要な仕事を山ほどこなし、しかも類い稀なクリエイティビティと情熱を持った人材である。
・ジャーク、怠け者、人当たりは良くても最高の成果は挙げられない者、悲観論者などがチームにいると、全員のパフォーマンスが低下する。


大事なのは能力密度、というのはわかる。
優秀な人が集まっていた方がそれは仕事は捗るだろう。

ここで気になるのは、能力というのは技能的な力だけではなさそうということだ。
おそらく大事になってくるのは人間性だったり、成長意欲(成長速度)というところではないかと思っている。

別の章でこんな話が出てくる。

チームに率直なカルチャーを醸成するには、有能だが協調性のない嫌なやつ(ジャーク)を排除する必要がある。「ジャークだがめちゃめちゃ優秀なのだから、失うわけにはいかない」と思うケースも多いかもしれない。しかしジャークがどれほど優秀かは問題ではない。その人物がチームにいたら、率直さの恩恵を享受できなくなる。ジャークが優れたチームワークに及ぼす影響は大きすぎる。そういう人たちは組織を内側から蝕む。彼らが好んで使うのは、同僚を面と向かって傷つけておいて、「自分は率直に意見を言っただけだ」とうそぶくという手だ。


これは非常にあるあるな事例だと思う。
もちろん能力は高いに越したことはないが、人間性はやはり必須だ。

フィードバック

Netflixでは常に素直なフィードバックを促す。
まず、「相手のため」にフィードバックをした方が良いのは間違いない。
(攻撃や批判は「相手のため」にならないので除く)

批判されるのが好きだという人はまずいない。自分の仕事について否定的なことを言われると、自己疑念やいらだちを感じ、攻撃されたと思う。私たちの脳は否定的フィードバックを受けると、身体的脅威を受けたときと同じ闘争・逃走反応を示す。血液中にホルモンが分泌され、反応時間が短くなり、感情が高ぶる。


フィードバックというのは簡単そうに見えて、非常に難しい。
否定的なフィードバックを含む場合は、言う側も言われる側もツラい。
特に日本人は波風を立てないことを好むので、何か思うことがあっても口にする人は少ない。

研究では、大抵の人は真実を聞くことの大切さを本能的に理解していることがわかっている。コンサルティング会社のゼンガー・フォークマンが2014年に実施した研究では、1000人近い回答者からフィードバックに関するデータを集めた。その結果、褒め言葉には気分を良くする効果はあるものの、修正的フィードバックのほうが自らのパフォーマンス向上に効果があると考える人のほうが、肯定的フィードバックのほうが効果的だと答えた人より3倍多かった。大多数の人が肯定的フィードバックは成果を高めるのにたいした効果はないと考えていた。


自分のパフォーマンスが悪いと言われるのにはストレスや不快感があるが、それを乗り越えてしまえば、フィードバックは本当に役立つ。

問題は「どう伝えるのか」だ。

フィードバックのガイドライン「4A」

相手を助けようという気持ちで(Aim to assist)

フィードバックは前向きな意図をもって行う。
自分のイライラを吐き出すため、意図的に相手を傷つけるため、あるいは自分の立場を強くするためにフィードバックをすることは許されない。

行動変化を促す(Actionable)

フィードバックはそれを受けた相手が行動をどう変えるべきかにフォーカスすべきだ。

感謝する(Appreciate)

批判されると、誰だって自己弁護や言い訳をしたくなる。反射的に自尊心や自分の評価を守ろうとする。フィードバックをもらったら、この自然な反応に抗い、自問しよう。
「このフィードバックに感謝を示し、真摯に耳を傾け、とらわれない心で相手のメッセージを検討し、自己弁護をしたり腹を立てたりしないためにはどうふるまったらいいのか」と。

取捨選択(Accept or discard)

たくさんのフィードバックを受けたとして、常にそれに従う必要はない。
心から「ありがとう」と言ったら、受け入れるかどうかは本人次第だ。
それはフィードバックを与える人、受ける人の双方が理解しておかなければならない。

最高水準の報酬を払い続ける

給料は誰にとっても重要な指標だ。
給料が増えて嬉しくない人はいない。
Netflixでは能力密度を高めるために給料の出し惜しみはしない。
他社からの転職のオファーがあれば、そのオファー額以上の額に給与を引き上げる。
(家電量販店の宣伝文句のようだ笑)

高い給与を払うためには、少数精鋭の組織にしていくしかない。(そしてそれが能力密度の向上につながる)
少人数で莫大な利益を上げることで最高水準の報酬を払い続けることができる。
払える原資がなくなってしまった場合でも、別の社員を解雇することで原資を増やし、給与を上げる。(とんでもない仕組みだ)

ボーナスよりも給料が大事

一般的な会社は昇給原資が決まっており、原資内において社員の給料アップがなされる。

成果連動型ボーナスは非常に理にかなっているように思える。社員の報酬の一部は保証する一方、一定割合は成果と結びつける方法だ。会社に多くの価値をもたらせば、ボーナスが得られる。だが、目標が未達に終わればボーナスは払われない。これほど合理的な仕組みがあるだろうか。成果連動型ボーナスはアメリカのほぼすべての企業が採り入れており、外国でも良く見られる。


Netflixでは成果連動型ボーナスを採用していない。
その理由は次のように書いてある。

ボーナスという仕組みそのものが「未来は予測可能であり、ある時点で設定した目標はその後も重要であり続ける」という前提に基づいていることを学んだ。しかし急激な環境変化に対応して迅速に会社の方向を修正しなければならないNetflixにおいて、社員の12月のボーナスをその年の1月に決定した目標に応じて決めるというのは一番やってはいけないことだ。社員がその時点で会社にとって何が最善かではなく、目標を達成することに集中してしまうリスクが生じるからだ。


次の一節も納得だった。

自分が新たな仕事を探していて、ふたつの会社からオファーを受けたと想像してみよう。片方は20万ドルの給料プラス15%のボーナス、もう片方は23万ドルの給料だ。どちらを選ぶか。当然初めからプラス15%分が確定している後者だ。駆け引きなし、初めから報酬がわかっているほうである。


ただボーナス制を導入しないのでは無く、その原資分を給料に上乗せすることに意味がある。

情報はオープンに共有

誰にでも秘密にしておきたいことはある。
だが、秘密の量が増えれば増えるほど、ストレス、不安、うつ、孤独感、自尊心の低下など心理的負担も大きくなる。
コロンビア大学ビジネススクールの経営学教授、マイケル・スレピアンによると、私たちには平均13個の秘密があり、そのうち5つは誰にも打ち明けたことがないものだという。

一方で、勇気を出して秘密を打ち明けると、打ち明けられた方は強い信頼感と忠誠心を抱く。

Netflixでは、四半期の業績を世間に公表する前に社員に伝えるそうだ。
「透明性を重視する」と言いつつ、そこまでできる企業はほぼ皆無だろう。
社員がこれらの情報を外に漏らした場合、株価が暴落するリスクもあるし、その社員はインサイダー取引で逮捕される可能性もある。
そのリスクも踏まえた上で、Netflixでは透明性を保つために事前に全てを公表する。
あらゆる財務情報、そしてNetflixのライバルが欲しがるような情報はすべて、社員なら誰でも入手できるようにしてあるそうだ。
これは社員との信頼関係が凄まじく高くないとできない。ただひたすら凄い。
そして、公表することで逆に信頼を得ている。ハンパない。

職位の低い社員でも通常は経営幹部にしか公開されない情報を見られるようになると、自力でそれまで以上の成果を出すようになる。いったん仕事を中断して上司に情報や承認を求める必要がなくなるため、スピードも高まる。上司からのインプットがなくても、優れた判断が下せるようになる。


他の事例として、半年後に50%の確率で〇〇さんに異動してもらう可能性がある場合に、いつ伝えるべきか?という話があった。
普通だったら、まだ確定してないし、ちゃんと決まってから話そうと思うだろう。
だが、Netflixでは即座に相手に伝える。
最初から伝えておくことで、相手はあらかじめ「準備」をしておくことができる。
あらゆる場合において、とにかく情報を隠さず、伝えることが大事だ。

ただ唯一、プライベートな問題については、個人のプライバシー権が組織の透明性に優先する。
公表するかどうかを選ぶ権利は本人にあるという考えだ。

意思決定にかかわる承認を一切不要にする

「上司を喜ばせようとするな。会社にとって最善の行動をとれ。」

Netflixでは社員に、判断を下す前に上司の承認を得ることは求めていない。
ただ優れた判断を下すには、コンテキストをきちんと理解し、さまざまな立場の人からフィードバックを受け、あらゆる選択肢を理解することが不可欠だと考える。
なんでも自由にできるからといって他の人々の意見を求めずに勝手に重要な決断を下せば、判断力が低いとみなされる。

失敗してしまった場合

自分の反対を押し切ってまで部下/同僚が行った施策がやはり上手くいかず失敗した場合、人間の心理としては
「ほら、俺の言った通りだったろ?」
「次はちゃんとアドバイスを聞いてね?」
と言いたくなる。

しかしそういった責め方をしてしまうと、部下はチャレンジしてイノベーションを起こすことよりもミスを防ぐことの方が大切だと思ってしまう。

どんなに努力したところで、賭けに失敗してしまうことはある。
そんな時は、下記の対応がオススメだ。

  1. そのプロジェクトから何を学んだのか尋ねる
  2. 失敗について大騒ぎしない
  3. 失敗を「公表する」よう促す


キーパーテスト

Netflixではすべてのマネージャーに対し、定期的に部下を評価し、それぞれのポストに最適の人材であることを確認するよう求めている。そしてマネージャーが正しい判断をできるように、「キーパーテスト」という手法を教えている。

チームのメンバーが明日退社すると言ってきたら、あなたは慰留するだろうか。
それとも少しほっとした気分で退社を受け入れるだろうか。
後者ならば、いますぐ退職金を与え、本気で慰留するようなスタープレーヤーを探そう。


最高水準の報酬を払っているからこそ、社員たちも最高のプレーヤーであり続けようとする。
逆に、最高のプレーヤーとして見做されなくなった場合、解雇されるということも理解している。
経営層の視点としては、解雇する時には新しいスタートを切るのに十分な資金を与える。
別の仕事に移るまで、自分と家族を養うのに十分な金額だ。(Netflixでは、非管理職は4ヶ月分、バイスプレジデントなら9ヶ月分とされている)

一般的な企業では全員がどれだけ優秀でも、その中で相対評価が行われる。
そのため、社員の関心は他社との競争ではなく、社員同士の競争に向くようになってしまう。(日本企業あるある)

Netflixではポジションの数は固定されていない。

チームの実力が高まるほど、実現できる成果も増える。
成果が増えるほど、成長できる。
成長できるほど、ポジションの数は増やせる。
ポジションの数が増えれば、より多くの優秀な人材を受け入れることができる。


フィードバック・サークル

Netflixでは、360度評価を実名で行う。
しかも、当たり障りのないコメントではなく、その大半は相手に対して改善を求めるコメントが占める。
また、360度評価を昇給、昇進、解雇の材料にはしない。
目的は誰もが成長することであり、ランク付けすることではない。

さらにライブ360として、8人程度のグループで対面でフィードバックをし合う取り組みもされている。
(これは上手くやらなくては日本においてはすぐパワハラ判定されてしまうであろう)
Netflixでは部下から上司へのフィードバックという逆方向のものも普段から自然と行われているため、こういった取り組みも可能なんだと思う。

コントロールではなくコンテキストを

コントロールによるリーダーシップとは、たいていの人になじみのあるものだ。
チームが取り組むこと、行動、意思決定を上司が承認し、指示を出す。
上司が部下の判断を直接監督し、コントロールすることもある。
何をすべきか指示し、頻繁に確認し、自分の望みどおりにできていない仕事はやり直しをさせる。

これを見て思ったのは、自分より専門性の高い部下を揃えているからこそ出来ることだな、と。
つまりこれも能力密度と関連のあることだと言える。

一方でコンテキストによるリーダシップはもっと難しいが、部下の自由度は大幅に高まる。
上司はできるかぎり多くの情報をチームと共有し、監督やプロセスによるコントロールがなくてもメンバーが優れた意思決定をして、成果を挙げられるように後押しする。
それによって部下の意思決定能力が鍛えられ、将来的に自分の力で優れた判断を下せるようになるというメリットがある。

コンテキストかコントロールかを選ぶ際に、能力密度も重要だが、会社の目的によっても変わってくる。

ミスの根絶が最重要目標なのであれば、コントロールによるリーダーシップが最適だ。
一方、イノベーションを追求する企業なら、失敗を犯すことはそれほど大きなリスクではない。
最大のリスクは会社に新たな命を吹き込むような素晴らしいアイデアが社員から出てこなくなり、時代について行けなくなることだ。

部下が何かバカげたことをしたら、部下を責めてはいけない。自分の設定したコンテキストのどこがまずかったのか、考えてみよう。自分の目標や戦略を正確に、かつ創意工夫を促すようなかたちで伝えただろうか。チームが優れた判断を下せるように、さまざまな前提条件やリスクを明確に説明しただろうか。ビジョンや目的に対してあなたと部下の足並みは揃っているだろうか。


グローバル企業への道

この章では、Netflixがアメリカ外に進出する上で、他国においてどのようにカルチャーを浸透させていくかを試行錯誤する様子が記述されている。
とりわけカルチャーの浸透が難しかったのはやはり日本だったそうだ。笑
それはそうだ、日本ほど直接的なフィードバックが苦手な国はないだろう。



直接的な文化がある国では否定的なフィードバックを行う際に「強意語」と呼ばれる言葉をよく使う傾向がある。
「きわめて」「どう見ても」「明らかに」といった印象を強める言葉がそれにあたる。
一方で、間接的文化を持つ国では「多少」「幾分」「ちょっと」「もしかしたら」「やや」など、批判を弱める効果のある「緩和語」が使われる傾向がある。

日本は明らかに間接的文化を持つ国だ。
かと言って本の中で別に日本が否定されているわけではない。
あくまで「文化の違い」として捉えてくれていることに少しホッとした。

Netflixは直接的なフィードバックを行うことが一般的ではない文化圏では、社員にその場で同僚や上司へのフィードバックを求めても上手くいかないことを学んだ。
しかし、正式な場を設け、フィードバックを議題に含め、準備のための指示や明確な手順を示せば、有益なフィードバックをうまく引き出すことができるということを見つけた。

確かに、あくまで仕事として「否定的なフィードバックを言い合う場」を用意された方がやりやすいかもしれない。
攻撃的な意図ではなく、相手のためのフィードバックという前提が共有されているのも良い。

また別の視点として、否定的なフィードバックを行う際にも「メッセージに親しみを込める」「命令ではなく、提案のように伝える」「絵文字を取り入れる」などの工夫を行うことも効果的であることが分かった。

比較的間接的な文化の人と話す時には、地ならしとしてちょっとした肯定的なコメントと感謝の言葉をまず口にする。もし仕事ぶりが全体的に良ければ、まず熱心に褒める。それから「いくつか提案する」かたちで、ゆっくりとフィードバックに入っていく。そして最後は「どれだけ価値があるかはわからないけれど、これはあくまでも私の意見だから」「採り入れるかどうかは、あなたの判断で」と締めくくる。


まとめ

Netflix社はまさに自分が実現したい組織そのものだった。
本を読んで、こんなに鳥肌が立ったのは初めてかもしれない。

そして、これは組織が大きくなってからではなかなか適用しづらい内容だ。
まさにベストなタイミングで読めたのは神の思し召しかもしれない。

とりあえず今後、弊社で取っていきたい方針は次の4つ。

  • 優秀な人のみを雇い、能力密度をひたすら高める
  • 給料は業界最高水準を提示し続ける
  • お互いに対する本気のフィードバックを言い合える文化を作る
  • 情報をすべてオープンにする
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最後に採用ページへのリンクを貼っておく。

柴田 和祈 X GitHub
株式会社microCMS 共同創業者 / デザイナー兼フロントエンドエンジニア / ex Yahoo / 2児の父 / 著書「React入門 React・Reduxの導入からサーバサイドレンダリングによるUXの向上まで 」

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