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イケてる感の正体

  • 思考
  • マーケティング

あの会社(またはサービスや商品や人)、最近勢いあるなぁと感じたことは誰しもがあるだろう。
本記事ではその感覚を「イケてる感」と称して、イケてる感とは何なのか?を考えてみた。

結論から言うと、良い口コミを目にする総量がイケてる感の正体だと思っている。

今の時代、誰もが何らかのSNSを利用している。
何度も目にすることで「何か最近よく見るな」「勢いがあるな」「評判良さそうだし、使ってみるか」となる。

フリクエンシー

フリクエンシーという単語がある。
広告業界では一般的に使われる用語だが、広告を目にする頻度を指す。

実際には広告の属性や種類によって最適な数は変わってくるため一概には言えないが、10回以上目に止まって初めてクリックしたという経験は皆さんもあるだろう。

人は1回見ただけではなかなか行動には移さないのだ。

広告の場合は過度に何度も見させられるとイメージが悪くなってしまい、効果が下がっていく。
しかし、口コミの場合はあればあるほど良い

イケてる感の醸成

では、イケてる感を作り出すにはどうすればいいのか?

当然ながら前提として、中身(会社・サービス・人・商品など)が良い必要がある。笑
中身がイケてないのにイケてる感を出すのは良くない。

それが最も難しいといえばそうなのだが、そこについては今回は割愛・・・

中身が良くても世の中に知られていない会社・サービス・人・商品はたくさんある。

良いものをイケてると認識してもらう後押しとなるのがマーケティングだ。

もちろん本当に究極的に物が良ければ、マーケティングなんてしなくても勝手に口コミが広がっていくが、そのレベルに達するのはとても難しい。

ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)をV字回復させた森岡 毅さんは消費者のプレファレンスが大事だと指摘している。

消費者のプレファレンス

  • 消費者のブランド選択における「相対的な好意度」のこと
  • 購買行動の際に消費者の頭の中にいくつかあるブランドの相対的な購入確率のことを指す
  • 市場における一人一人のプレファレンスを束にすると、市場シェア(売上個数別のシェア)に等しくなる


プレファレンスを上げるために何をどう仕掛けるのか?
森岡さんは次のように述べている。

  • 消費者視点が重要である
  • 常に変化し続ける消費者プレファレンスに競合を出し抜いて対応することに集中する
  • 会社を市場(消費者)にフィットさせ、消費者の頭の中に「選ばれる必然」を構築し、売上を中長期的に獲得できるようにする
  • 選ばれる必然を「ブランド」と呼ぶ


実際のUSJでの施策例はこちら。

  • 「映画だけの専門店」から「アニメやゲームもあるセレクトショップ」に変えた
  • 小さくなる関西市場でより広くプレファレンスを獲得できるようにした
  • 「ハリー・ポッター」を建てることで、遠方からUSJに行きたくなる理由を作った
  • 関西市場が小さくなる未来は変えられなくても、日本全国やインバウンド(海外旅行客)から集客できる構造を持てば、生きていけるどころか今よりもずっと大きな市場で戦える


「選ばれる」には色々な比較検討が必要。
「イケてる感」はそもそも比較検討の土俵に上がるために必要で、「認知」にも近いと思う。

やるべきこと

冒頭にて、イケてる感の招待は良い口コミを目にする総量と書いた。
ではどうやって良い口コミを増やすのか?

モバイルアプリなんかはアプリストアの評価=そのまま口コミとなるため、アプリに価値を感じた瞬間にレーティングのポップアップが出るように設計されている。

つまり、満足度が高まった瞬間に口コミを促すことが出来るかどうかがひとつの重要なポイントだろう。

そしてユーザーが初めて価値を感じる瞬間まで誘うのがオンボーディングの役割だと思っている。
可能な限りそこまでのステップ数を減らすのが大事。
ステップが増えるごとにファネルは小さくなっていく。

また、口コミでなくても自社ブログやTwitterでの発信が多いほど、人々が目にする回数は増える。

これはこれで一定の効果はあるだろう。
しかし、こちらは対象が本人であるため「イケてる」というよりは「頑張ってるな」という感覚に近い。

これに加えて第三者からの口コミがあると「頑張ってるし、他の人も認めてるし、信頼できる」となる。

社会的証明の原理

特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断するという原理のこと。

自分で何を買うか決められる人は全体のわずか5%しかおらず、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちである。
どう振る舞えばいいのかを考える時、一番参考になるのは自分と類似した他者の行動である。

上記のような人を動かす原理については下記記事でも紹介している。

人を動かす心理学|柴田 和祈
〇〇をしたら人は△△と思うという心理的な直感について学びたかったため、「影響力の武器」を読んだ。世の中に溢れている様々な心理テクニックが紹介されている。
https://www.mythinkings.net/psychology-of-persuasion

サービスを選ぶにしても、物を買うにしても自分も確かに必ず口コミ・レビューを確認してしまう。
プロモーションも良いが、オーガニックな評判は一朝一夕で築き上げられるものではないので、より盤石な結果をもたらす。

まとめ

大事なのはこのあたり。

  • 良いプロダクト(あるいは会社・商品・人など)であること
  • 価値を感じさせるためのオンボーディングをしっかりやること
  • 満足度が高まった時に口コミを促すこと


言うまでもなく、アップルやディズニーあたりは条件を満たしている。
これがブランドと呼ばれる物になっていくのだろう。

柴田 和祈 X GitHub
株式会社microCMS 共同創業者 / デザイナー兼フロントエンドエンジニア / ex Yahoo / 2児の父 / 著書「React入門 React・Reduxの導入からサーバサイドレンダリングによるUXの向上まで 」

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