大企業エンジニアを経てからの起業は悪くない

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起業といえば若いメンバーが中心でイケイケなイメージがあるが、最近は大企業を経験した30代起業も増えてきている気がする。自分もその一人だ。
創業から3年ほど経ったので、大企業エンジニアを経てからの起業についてまとめてみる。

だいたい何でも作れる

それなりに大企業で頑張ってきた人であれば、そこそこな技術力がついている。
2,3人で組めば、デザイン、フロントエンド、バックエンド、インフラの全てを網羅できるだろう。
(個人開発をやっている人なんかはひとりで全て賄えるかもしれない)

弊社の場合は、自分がデザインとWebフロントエンド、代表の松田くんがアプリフロントエンド(iPhone, Android)とバックエンドとインフラという守備範囲だったので、2人でだいたい何でも作ることができた。

大企業の30代にもなると給料もそこそこいっているので、バーンレートも馬鹿にならない。人数は最小限に越したことはない。
自分たちは二人とも家庭持ちだったので、尚更給料を安くすることはできなかった。

何でも作れるというのは結構な強みでありつつ、だからといって成功するわけではないというのがまた重要だ。
思うに、何でも作れるというのは「速く作れる」ということに直結していて、打席に立てる数を増やせるところが一番のメリット。

創業して最初のプロダクトで上手くいくなら良いが、そんなケースはほぼない。(弊社も10回以上はピボットしている)
とにかく失敗に失敗を重ねて、経験値を積んでいき、時の運も相まってやっと軌道に乗るという感じ。
なので、「速く作れる」というのは最終的に成功にたどり着ける確率を高めると思う。

社長がエンジニアじゃない場合は、そもそもプロダクトを作れる人を探すところから始める必要があるので、そのケースと比較すると圧倒的に優位である。

会社の構造を知っている

当たり前と思うかもしれないが、起業仲間と話しているとそんなに当たり前ではなさそうだった。大学在学中に起業していたりすると社会人を経験していないことになるので、会社ってどういうところなのか知らないパターンがあるのだ。(観測上、結構多そう)

単純なマナーとか、メールの送り方とか、ミーティングの雰囲気とか知っているのに越したことはない。

受託ができる

そこそこの技術力があれば受託ができる。大企業に勤めていると人脈もあるので、仕事をもらえるケースも多い。またそういった経由での仕事は単価も高め。

初期のスタートアップにおいて必要なお金は何かというと、ほぼ人件費である。(もちろんジャンルによっては設備投資などもあるかもしれないが)

資金調達を行い、それを運転資金としてプロダクトを開発している会社も多いだろう。
しかし、そもそもスタートアップにおいて資金調達とは事業を加速させるさせるためのものなので、事業が軌道に乗ってきたタイミングで行うべきだ。

3年間スタートアップをやっていて思うのは、とにかく「死なない力」を持っていることは重要だ。
お金がどんどん減っていくプレッシャーは実際経験しないと分からないと思うが、かなり精神がすり減る。(弊社も2度キャッシュが底をつきそうになった)
キャッシュがあるだけ幸せになれる。それは間違いない。

死なないためにはやはり受託は必要で、受託でキャッシュを作りつつ、何度もプロダクト作りに挑戦し続けることが大事だ。
もちろん毎回「このプロダクトならいける!」という意気込みでチャレンジしている。それでも撃沈し、その失敗から学び、また再度チャレンジする。この地獄のようなループを繰り返してやっと成功に近づくことができる。
ピボットは強くてニューゲームみたいなもので、繰り返せば繰り返すほど強くなり、プロダクトの確度は高まっていく。

最悪うまくいかなくても、その頃には百戦錬磨の優秀なフリーランスが誕生していることだろう。

少数精鋭

30代で起業すると同年代の仲間が増えがちで、大人な集団ができあがる。高収入のエキスパート集団だ。
家庭を持っている人も多く、社風は自然とホワイトになる。
自分の周りを見ていると、とにかく人を増やして事業を伸ばしていくというよりは少数精鋭で事業を推進していくタイプの企業が多そうだ。(もちろん事業の性質によって採用すべき社員はマチマチだとは思うが。)
少人数で会社が成長できるほど社員一人当たりの売上高は当然高くなるので、従業員への給料も多く払えるだろう。



一方で、いざ大企業からの起業を考えてみると次のようなことに悩む人が多いと思うので、自分なりの意見を述べてみる。

ここまで築き上げてきたものを捨てがたい

大企業の中で6, 7年働いたという状態はいわゆる中堅で、技術力なり評価なり人脈なり、様々な面での信頼を築き上げているはずだ。収入も多い人は1,000万を超えている人もいるかもしれない。
このままいけば安定した人生を送れる、という感情はきっと間違いではない。
それを手放してまで起業するべきか?というところで迷う人は多いだろう。(大企業からスタートアップへの転職でも同じことが言える)

ところが、実は起業しても今まで築き上げてきたものが失われるわけではないのだ。培ってきた技術力はさらに磨かれ、評価される側ではなく評価する側になり、収入は1,000万円どころか億の世界がそこには広がっている。
技術力だけでなく、マーケティングや営業、CSも全て経験することになるので、個人の市場価値は確実に高まる。

守るべきものがある

30代になると結婚して、子供もいて、住宅ローンもある人も多い。(自分は24歳で結婚、27歳で第一子誕生&一軒家購入した)
そんな状況で「起業したい」なんて言い出したら奥さんから反対されるのは目に見えている。
そんな時は起業へのリスクをできる限り減らすことが重要だ。

自分の場合、以下の2つルールで(半ば強引に)妻を説得した。

  • 給料は現状維持する
  • 会社が上手くいかず、お金が尽きたらすぐに転職する


要は、毎月ちゃんと今まで通り口座にお金を振り込むことができれば問題ないのだ。

実際のところ、一つ目の「給料の現状維持」は守ることができた。(ただ仮に年収1,000万あったら維持は厳しそう。700万くらいが限度かも)
二つ目の「お金が尽きたらすぐに転職する」に関しては、言うのは簡単だが、実際にその場面に直面すると決断するのはなかなか難しいと知った。
受託やら資金調達やらで何とか生き延びようとするので、実際は本当に会社を畳む決断をするまで数ヶ月は必要だと思う。つまりは無給(減給)状態が数ヶ月は続く。
そこはリスクとなるので、最初からやはり受託等でキャッシュを蓄えておくのが対策になるだろう。

もろもろ振り返ってみて

大企業エンジニアを経てからの起業は悪くないと思う。
今まで培ってきた技術力や人脈をフル活用すれば、リスクもかなり減らすことができる。

ただ、どんなに優秀なエンジニアでも起業して成功するとは限らない。ビジネスには正解がない分、エンジニアにとっては逆に苦手な可能性もある。
ビジネスはビジネスでエンジニアリングと同様に何度も経験を積むことで成功に近づけることは経験上間違いないので、粘り強くチャレンジすることが重要。

最近は若くて優秀なエンジニアが本当に多い。そして優秀なエンジニアほどだいたい30代を目前にして今後のキャリアプランに悩む。
その際には起業という選択肢も視野に入れてみてはいかがだろうか。

柴田 和祈 Twitter GitHub
株式会社microCMS 共同創業者兼COO / デザイナー兼フロントエンドエンジニア / ex Yahoo / 2児の父 / 著書「React入門 React・Reduxの導入からサーバサイドレンダリングによるUXの向上まで 」

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