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CFO思考を読んだメモ

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CFO思考」を読んだ。
気になったポイントをメモ書きとして残しておく。

ピケティの不等式

「21世紀の資本」のなかで、著者であるトマ・ピケティ氏が提示した「r > g」という不等式。
「r」は資本収益率(return)を示し、「g」は経済成長率(growth)を示している。
ピケティ氏は世界20カ国以上の過去200年の税務データを収集・分析した結果、投資によるリターンの方が労働による賃金の伸び率を上回っていると述べている。

昨今の世界トップ層の経済成長率を見る限り、理解できる。
もちろん自分が属している企業の成長率や元本によっても変わってくるので一概には言えないが。

資本コスト

エクイティ(株主資本)はタダではなく、コストがかかる。
銀行から資金を借りたら金利がかかるように、投資家から資本を集めたら「資本コスト」がかかる。

企業経営の最終的なリスクを引き受けている株主は、そのリスクと見合う一定の見返りを求めている。
日本企業の場合は、資本コストはおおよそ8%である。

つまり、自己資本利益率(ROE)が8%以上であることを求められる。
1億円出資されたら、そのお金で1億800万円を稼ぐことができるということ。
8%を境に株価は上昇していく。

変な言い回しだが、お金を使ってお金を稼げる必要がある。これは弊社が弱いポイントで、これから強化していきたいところ。

また、業績予想の精度が高く企業が予想した数値に近い数字で決算が着地する会社と、業績予想が上下に大幅に外れる企業があるとした場合、後者の資本コストは高くなる。

資本コストを下げるためには、投資家にとって「サプライズのない経営」を行うことが重要。

資本がもつ3つの役割

  1. リスクが発現した際に会社を救うリスクバッファーとしての役割(財務健全性の確保)
  2. 成長投資に向かう原資(成長の実現)
  3. 株主還元の原資(株主還元の充実)

自分の会社がどこまでリスクを取れるかが一番見えているのはCFO。
CFOは金庫番にならず、取れるリスクを最大限に取ることが重要。

ステークホルダー間の序列・優先順位

ステークホルダーは株式会社に対して賭けているものがある。
次の表は企業の債権支払いを表しているが、株主は債権者ではないためここには含まれない。

ステークホルダー

会社の義務

従業員

賃金の支払い

顧客

商品の提供

取引先

仕入れ代金の支払い

金融機関等

金利・元本の支払い

地域社会

税金の支払い

会社が倒産した場合、資産が現金化され、給料や税金や借入返済など各ステークホルダーの債権の支払いに充当される。
これをすべて支払った後に「残余財産」があれば株主に支払われるが、なければ株券は紙くずになる。

株主への支払いは、他のステークホルダーに劣後しており、株主はより高いリスクを引き受けている。
企業経営の最終的なリスクを引き受けている存在であることから、平常時には経営に関与する権利(株主総会における取締役の指名など)と一定のリターン(配当などの株主還元)を受ける権利がある。

企業が最も経営破綻しない国、日本

日本においては会社を潰さないことを最優先に経営判断が行われる。
その結果、日本企業は倒産が少なく、人々は安心して生活ができ、そのことが日本社会の安定と犯罪の少ない安全をもたらしてきた側面がある。

しかし、日本企業はこのままでは「潰れもしないが、成長もしない」状態に至る懸念がある。
ほとんどの上場企業が資本やキャッシュを過大に保有している状態のため、もっと攻めの姿勢に転ずる必要がある。

安定性と成長性を両立することが求められている。

  • 社員の生活を保障する一方で、力を発揮する社員には国籍や年齢、性別などに関係なく高い報酬で報いる
  • リスクアペタイトの範囲を決め、そのなかでのチャレンジを奨励し、失敗から学ぶ
  • リスク管理やコンプライアンスは要点を押さえて効果的に行う
  • 過度な形式主義を改め、実質主義・実践主義で事業を運営する

イノベーションに必要な時間軸と投資家の時間軸とのミスマッチ

世の中を変えるようなイノベーションには構想から20年かかる。
一方で投資家の時間軸は、ロングオンリーの長期投資化でも3年程度。

投資家と企業サイドがお互いの時間軸が異なることを認識すること、そしてそのギャップを埋める努力をすること、CFOが社内・社外双方に働きかけ企業と投資家の架け橋になることが重要。

人的資本も人件費というPL上のコストの側面からとらえるのではなく、将来のPLを生むBS上の簿外項目である、広義のBS上の資本であると考える。

日米の会計基準の違い

会計基準によって決算結果が大きく異なる。
日本基準と米国基準ではMUFGの決算額は1兆円も差があった。
これとは別にグローバルのIFRS(国際財務報告基準)という基準もある。

たとえば、買収を行った際に生じる「のれん」は日本基準では毎年償却が求められるが、米国基準やIFRSでは帳簿価格は原則として不変、といった具合に会計ルールが異なる。
日本基準では、「のれん」の定時償却分だけ毎年の利益が小さく見えてしまう。

「ものさし」である会計基準を選定し、会計ルールの解釈論について監査法人と議論することを厭わず、みずからが納得した財務諸表でステークホルダーと対話するのがCFOの役割。

まとめ

自分には難しい内容の本だったが、会社経営をやっている故にギリギリ理解できた感じではあった。
(おそらく経理/財務担当・IR担当などをターゲットにしていると思われる)

海外投資家と直にやり取りしているCFO視点での日本企業の見え方、企業成長のポイントなど学びは多かった。
というか自分の知識が浅すぎることを認識できた。

三菱UFJがリーマンショック時にモルガン・スタンレーに90億ドル出資して救った話などとても面白かったし、熱くなった。
実は三菱UFJの利益の7割は海外M&Aから来ているということも初めて知り、だいぶ印象が変わった。

柴田 和祈 X GitHub
株式会社microCMS 共同創業者 / デザイナー兼フロントエンドエンジニア / ex Yahoo / 2児の父 / 著書「React入門 React・Reduxの導入からサーバサイドレンダリングによるUXの向上まで 」

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