いつからブランディングを意識し始めるべきか

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企業にとってブランディングが重要なのは言うまでもない。
アップル、ディズニー、スターバックス、ナイキなどブランディングゆえに大成功を収めている企業も多い。

かといって、最初からブランディングを意識するのも難しい。
スタートアップ初期は事業内容もコロコロ変わる。
ではどのタイミングで企業のブランディングをしていくべきかという点について、宮村岳志さんの「ブランディング・ファースト」を元に考えてみる。

ブランディングとは

ブランド(brand)の起源は、畜産家が牛に、区別のための焼印をつけたことにある。家畜やワインの酒樽などに、産地等の区別をするためにマークを入れたわけだ。
企業にとって「柱にしたいもの」「柱になるべきもの」を、誰もが納得するブランドとして確立させるための施策をブランディングと呼ぶ。

ブランディングのために必ずしもプロダクトがある必要はなさそう。
コンサルファームやローファームなど、サービスを提供している企業でもブランディングは可能だ。

ブランディングの本質は、「企業の理想像」を明確にすることです。 どうなりたいのか。どう見られたいのか。自社の使命とは。社会に何をもたらせるのか──。 これらが明確になると、進むべき方向も明確になるので、社員の意思統一がなされ、無駄が省かれ、意思決定のスピードが上がります。


なぜブランディングをするのか

時代の変化により、「規模の経済」から「品質の経済」への移行してきている。
おそらく誰しもが100円ショップに行ったことがあると思うが、これが100円?安すぎでは?というような商品で溢れている。

「規模の経済」から「品質の経済」へ
コンビニエンスストアやスーパーマーケットのプライベートブランド(PB)商品が顕著な例ですが、母数の大きさによって、中小企業を大きく上回る原価の圧縮を実現し、開発力でも圧倒的に勝っているため、「安いけどそこそこ」ではなく、「安いけど高品質」なプロダクトが次々に生まれています。


こうした背景から、ユーザーの「平均的なプロダクト」のイメージが大きく上書きされている。
そんな時代に、スタートアップがコモディティ化(均質化して付加価値が低下)した市場で、大手の開発力と真正面から競い合っても勝つことはできない。
スタートアップが「安さ」で勝負するのは悪手だ。

どうやってブランディングするのか

ブランディングのためにはPOD(Points of Difference)を意識する。

同じような評価を受ける競合のプロダクトに差をつけるために、新たな要素を付加して高い評価を得ることで「追い越すことを目指す」抜きん出る戦略がPODです。 お茶で言うなら、特定保健用食品(トクホ)認定商品や、観光地などで販売される水や茶葉にこだわった特別な商品などが当てはまります。


これはスタートアップ界隈にてよく言われる、「大企業に勝つにはニッチな領域を攻める」に似ている。
自社独自の強みを持つことがブランディングにつながる。

弊社のプロダクトであるmicroCMSはヘッドレスCMSと呼ばれるもので、日本においてはかなり新しいジャンルのプロダクトだ。
既存のCMSに加えてAPIも公開しているハイブリッド型CMSを提供する企業は増えてきたが、完全にヘッドレス(APIのみ)なCMSを提供している企業はごく少数なので、PODによる差別化はできているように思う。
一方で海外にはヘッドレスCMSはたくさんあり、その領域において完全な差別化はできていない。
海外プロダクトが今後日本に進出してきたり、またはmicroCMSが海外進出する未来を考えると、日本独自の商習慣に合わせたUI/UXというところが強みになりそうだと思っている。
日本独自の商習慣が海外にウケるのか?というと、そこがニッチなポイントになると思っていて、例えば段階的なレビュー機能などは刺さるところには刺さりそうだ。

「Best Global Brands 2019」のベスト10

ブランディングはC向け領域の方が重要なのかもしれない。
先に挙げたアップル、ディズニー、スターバックス、ナイキは全てC向けサービス/プロダクトが主軸だ。
ブランディングは消費者にイメージを植え付けるので、C向けにはダイレクトに効くだろう。
最近増えてきているDtoCのサービスには特に効果がありそうだ。

ブランディングによる効果

では具体的にブランディングにはどんな効果があるのだろうか?本書ではアウターとインナーそれぞれに対して効果があると説明している。

アウターへの効果

  • 保証効果(知っていることで買っても大丈夫という保証になる)
  • 差別化効果(同じようなプロダクトの中でも選ばれる)
  • 付加価値効果(他のプロダクトより高価格でも選ばれる)


いずれも非常に強力で、特に3つめの付加価値効果はスタートアップにとっては嬉しいところだと思う。
大企業にはマーケティング力では勝てないので、単価は高めに着実に売っていくことができるのが成長の秘訣。
(最近はClubhouseなどバイラル効果をうまく使うことで爆発的に広がるケースも稀にあるが...)

インナーへの効果

  • ブランド力の強化
  • 優れた人材の獲得
  • 働き方改革


ブランディングが確立されていると、従業員にとってその会社に属していることが誇りに感じられるようになる。
そうすると単純に仕事への熱意も高くなり、離職率も下がっていく。
また、採用にも大きな効果がある。
業績が好調になって得られた利益はしっかりと従業員に給料や福利厚生といった形で還元してあげることで正のスパイラルが生まれる。

本書によると、順序としてはインナーに対してブランディングを浸透させた後にプロダクトに反映していくのが正しいようだ。

具体的には何をすれば良いのか

「情報収集フェーズ」では、徹底的に情報を集めて整理し、把握・予測を行います。 「開発フェーズ」では、ブランドにするべき柱を明確化し、戦略などの方向性を開発していきます。 「具体化フェーズ」では、デザインやマーケティングを検討し、柱を磨きながら具体化させていきます。


ということで、以下の3つのフェーズがある。

  • 情報収集フェーズ
  • 開発フェーズ
  • 具体化フェーズ


まずは従業員全体に自社の特徴や強みだと思われることをヒアリングしていく。
ブレストでとにかく質より量を意識してたくさんの意見を洗い出す。
それらのグルーピングを行うことで、共通項や異質項がはっきりとしてくる。

多くの情報に共通する要素は、社内のさまざまな立場のメンバーが認識しているものであり、企業の柱につながります(そのためには、部署や立場がそれぞれに異なる、幅広いメンバーが議論に参加しているのが大前提となります)。
そして、少数ながら目を引くものがある要素は、一人ひとりのメンバーのスキルなど、属人的なものである可能性が高いと言えます。共通化はされていませんが、企業の強みとして育てられる可能性があります。


つまり、共通項はブランドの土台となるもので、異質項は差別化を実現するブランドを育てるためのヒントとなる。

開発フェーズでは情報収集フェーズで集めた情報を整理して、どんなブランドを確立していくのかを明確化し、方向性を定めていく。
まずは下記の項目について考える。

  • ターゲットペルソナ:ブランドのターゲットとなる顧客層
  • 機能的価値:ブランドから得られる具体的な効用
  • 情緒的価値:ブランドそのものや、プロダクトから感じられる空気感や気持ち
  • ブランドパーソナリティ:ブランドを人に喩えたときの性格や個性
  • ブランドプロミス:ブランドが顧客に提供する価値の約束


本書に掲載されていたスターバックスに当てはめてみた例がこちら。

1)ターゲットペルソナ:忙しい毎日を過ごす都会的な人たち
2)機能的価値:洗練された空間で提供される美味しいコーヒー
3)情緒的価値:心地よく、そしてリラックスできる/クリエイティブで自由な自分を表現
4)ブランドパーソナリティ:都会的であり、こだわりもありながらフレンドリー
5)ブランドプロミス:お客さまのサードプレイスとして、豊かで潤いのある価値ある時間提供


ブランドパーソナリティは実際の有名人に当てはめてみると良いそう。
竹中直人さんなのか、香川照之さんなのか、木村拓哉さんなのか。
実際に自社を表現するのにぴったりな、CMに起用したい俳優をイメージすると良いのかもしれない。

最後の具体化フェーズではブランドアイデンティティ(BI)を開発する。

BIは、ブランドイメージを伝えるためのロゴやカラー、メッセージなどの総称です。CIのブランド版とも言えます。 P&Gのように、パンパース、プリングルスなど傘下にさまざまなブランドを持つ企業の場合、CIとは別に、ブランドごとのBIを持っています。また、アップルのように、CIとBIの切り分けがなく、1つのマークが全プロダクトに用いられる企業も少なくありません。


BIではブランドイメージを視覚的に伝えられるロゴマークやシンボルマークなどのビジュアルアイデンティティ(VI)、ブランドイメージを直感的に伝えられるブランドスローガンなどを開発していく。

そして最終的には自社の全タッチポイントが、ブランドコンセプトに一致したビジュアルや体験になることが非常に大切。 統一感が増せば増すほど、存在感も大きく増していく。

いつからブランディングを意識するべきか

ここまでを踏まえて、いつブランディングを意識するべきかについて考えると、「出来るだけ早く」であることは間違いなさそうだ。
ただ実際問題、スタートアップの場合はプロダクトがPMFしない限り立ち行かなくなってしまうので、まずはそこが一番大事だと思う。
ある程度事業の見通しが立ったタイミング(シリーズAくらい?)でブランディングを意識し始めるくらいがちょうど良いのではないかと思う。急激に人数が増えてくるタイミングでもある。
思い返してみるとシリーズAのタイミングでリブランディングしている企業はそこそこ見る気がする。(そのタイミングでやっとデザイナーがジョインしたという話でもありそうだが)

所感

microCMSは皆の目にどのように映っているのだろう。
バックエンドを肩代わりするという意味でフロントエンドの人にとって嬉しいサービスなので、フロントエンドの人が憧れるようなサービスにしていきたいなぁと個人的には思う。
そういう意味ではプロダクトの磨き込みの他にも、外部への発信(ブログや登壇)等も重要な要素なんだろうな。
あとは「ユーザーファースト」も引き続き大事にしていきたい。
(古巣であるヤフーのバリューの一つでもあった。思い返してみると他にも「迷ったらワイルドな方を選べ」とか、「フォーカス」とか良いバリュー設定だ・・・)

ブランディングを意識し始めるにはまだ早いかもしれないが、自社の強みや弱みなどは当然言語化して社内で共通認識を持っておくべきだ。
また、VI(ビジュアルアイデンティティ)がかなり曖昧なので、そこはちゃんと考え直したいと思っている。

柴田 和祈 Twitter GitHub
Wanta, Inc. COO / デザイナー兼フロントエンドエンジニア / 日本製のヘッドレスCMSを作っています / ex Yahoo / 2児の父 / 著書「React入門 React・Reduxの導入からサーバサイドレンダリングによるUXの向上まで 」

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